こんにちは、Rakkyです。
工場で働いていると良く聞くようになった「多能工」という言葉、
みなさんの職場では浸透していますか?
今回はそんな「多能工」の抱える「理想と現実」について話したいと思います。
私は現在印刷業界で約5年現場オペレーターとして働いています。多能工化については上層部の会議で度々話題に挙がるようです。
この記事で分かること
- 現場オペレーター目線で考える多能工の理想と現実
- 机上の空論に終始しない多能工化を実現させるアイデア
この記事は、
ネットでみんなが同じように載せている多能工化のメリットやデメリットを知った上で、
末端作業員である管理人の視点から、多能工化の持つ問題点や本当に多能工化を進めたいならこうすべきという内容で記事を書いています。
ビジネスの専門家が提唱する多能工のやり方では多くの「中小企業」は対応出来ないから失敗と言われるのでは?と管理人は疑問を持っています。
工場の仕事については以下の記事で解説しています。よろしければご覧ください。
多能工とはそもそも何なのか
まずは多能工について、おさらいしておきます。
多能工の定義
- 所属部署の業務を遂行しつつ、所属部署以外の仕事も遂行するスキルがある
- 所属部署の業務を遂行しつつ、所属部署内の別工程の仕事も遂行することが出来る
おおむね、このように定義されています。
一言で言うと
「オールマイティな人材」=「多能工」という訳です。
ちなみに1つの仕事を専門として行う作業員のことは「単能工」と言います。
なぜ「多能工=失敗」が多いのか
グーグルで「多能工」と調べると「多能工 失敗」という予測キーワードが出る程、世間的には「多能工は失敗する」という意見が多いようです。
なぜ「多能工=失敗」が多いのか?
それは、多能工を促進する会社の上層部が現場の状況を分からないまま
「うち(の工場)も多能工化を促進すれば将来安泰じゃないか!是非各部署一丸となって進めてくれ!」
と丸投げした結果、最初はそれっぽいことをやろうとするも
「多能工は無理です。失敗しました。」
となっているケースがほとんどのはずです。
そこには「多能工=便利屋=応援要員」という考えや前提で多能工を捉えるから
「失敗しました。」
となるのではないでしょうか?
多能工化がもたらす理想像(机上の空論になりがち)
仮に、本来求められる多能工化が成功した場合の「理想像」を見てみましょう。
業務時間の平準化
例えば
「部署Aが忙しいのに部署Bは忙しくない」
こういった状態であれば部署Bのメンバーが多能工になれば、部署Aの応援要員となれる為、忙しさが平準化され残業時間も部署間で平準化させる、というのが多能工がもたらす理想像です。
ただし、ここで言う「応援要員」とは、アルバイトレベルでの単純労働では無く、他部署の業務遂行スキルまで満たした人員が応援に行くという前提です。
業務の属人化解消
多能工が存在すれば
「あの人しか仕事のやり方を知らない」
「あの人が休んだら仕事が何も出来ない」
という事態を回避できる可能性が高くなり、会社としてリスクヘッジとなります。
上記同様、「自部署だけでは無く他部署でも指揮を取れる人材」で無けれは多能工は成立しない、ということになります。
アルバイト的な扱いを多能工に求めるのは間違い、ということです。
机上の空論とも言える理想像はほぼこの2つに集約されているはずです。
次は多能工化によるデメリットも見ておきましょう。
多能工化のデメリット
多能工化を行う上で致命的なデメリットをいくつか紹介します。
多能工自体の人手不足
そもそもなぜ、最近になって多能工を推進することになったのでしょうか?
「人手が足りないから」ですよね。
しかし多能工は「一人二役」です。
状況によっては
「朝から定時まで部署Aの仕事をして、残業で部署Bの仕事をする」
ということになりかねません。
多能工をする人からすれば、仕事量に対する不満が出てくることが想定出来ます。
多能工に起用された人が消耗する
「一人二役」の多能工は責任も一緒に増加します。
元々業務を平準化しようとして
残業時間の少ないはずの人を多能工に起用したのに、最終的にその人が最も業務過多におちいり、重い責任まで背負う
リスクがあります。
そうなってはせっかく会社内の業務を多く習得している人が退職してしまったり、休職してしまうリスクが高くなります。
私が所属している会社において、多能工化に関する報告資料を見たことがあるのですが、
説明イラストとして「分身の術」のイラストが使用されていました。
当然ですが、
多能工は「分身の術」ではありません。
2人分の役をやっている分、仕事の精度が落ちる可能性を考慮したり、フォロー体制が必要になる可能性があります。
中途半端な多能工を生み出してしまう
そもそも多能工の人をどうやって育成するのか、はっきりさせておかないと多能工化は失敗することになります。
多能工に起用された人が、中途半端に各部署の仕事をかじっただけでは何の意味もありません。
部署Aの前工程の一部だけを覚えたり、
部署Bの仕上げ工程の一部だけの仕事を覚えたり、
そうした「正社員なのに派遣社員のような扱い」を続けると、中途半端で使いにくい社員を会社が自ら生み出してしまいます。
またそういった扱いを受けた正社員もまた
「この立ち位置が、最も責任を負わず楽である」
と居直ってしまう危険もあります。
それでも多能工を推進するのであれば、
苦し紛れの施策であることを承知の上で
会社上層部が現場レベルまで視点を落として一緒に取り組まないと失敗することになります。
また、評価制度が曖昧だという意見もネットでは多能工化のデメリットとして挙げられることが多いようですが
「わざわざ管理しにくい人材を会社をあげて作るのは、間違った運営方向に進んでいる」
と言わざるを得ません。
現実的に多能工を進めるには
単能工の繰り返しでしか多能工は実現しない
本当に多能工化を進めたいのなら、これしか方法はありません。
例えば部署Aに佐藤さん、部署Bに山田さんがいたとします。
- 佐藤さんが部署Aで3年掛けて業務を習得し、客観的にスキルも十分だと判断される
- 山田さんが部署Bで3年掛けて業務を習得し、客観的にスキルも十分だと判断される
- 佐藤さんは部署Bに移り、同じように3年掛けて部署Bの業務を習得する。
- 山田さんは部署Aに移り、同じように3年掛けて部署Aの業務を習得する。
この多能工化の考え方は、2人を対象とした多能工化施策です。
これを繰り返すしか本当の意味での多能工を生み出すことは出来ないと管理人は考えます。
結局私達は「多能工」という新しい言葉に踊らされ、右往左往しているだけです。
計画的な異動による循環を行うことだけが、本当の意味で「使える人材」を育成することに繋がります。
不平や不満が出やすい多能工化という茨の道にあっては、
お互いの部署で協力し合っていることを強調する「一体感」「仲間意識」が無ければ多能工をしてくれる人の責任感やモチベーションが続きません。
1人だけ多能工化の道を歩んでいても孤独になりますが
「同じように多能工の道を進んでいる人が同じ会社にいる」
「今、現場の労働方針が変わろうとしている」
ということが現場の人間に伝われば、多能工を引き受けてくれる人も多少増えるでしょうし責任感を持って取り組んでくれる可能性が高くなります。
人間は2つのことを同時に行えない
また前提として、人間は2つのことを同時に行える様には出来ていません。
仕事において「マルチタスク」なんて言葉がありますが、本当の意味で仕事を同時進行出来る人間はいません。
仕事を沢山抱えているはずなのに「仕事が早い」と言われる人は
「1つの仕事を終わらせるのが異常に早い」
「次の仕事への切替もスムーズで早い」
「優先順位を付けて1つずつ対処している。」
というのが真実です。仕事の同時進行は質を落とすだけです。
そうした理由から、無策で多能工化を推進しても無駄になります。
あくまで
「仕事とは基本的に単能工である」
という前提を持った上で
「それでもなお取り組むべきか?」
と多能工の是非を議論して決めるべきです。
まとめ:多能工は上層部の考えだけで押し付けると失敗する
今回は多能工というテーマでネットで散見される意見と、現場作業員でもある管理人が思うところを織り交ぜた意見を発信させていただきました。
行き当たりばったりな多能工をしようとしているのであれば、それは止めましょう。
契約社員や派遣社員を雇うだけで目先の問題は解決します。
本当の意味で多能工化を進めたいならじっくり腰を据えて数年かけて取り組むべきです。
人選や数年先の目標像をはっきりさせてから進めて欲しいと管理人は考えます。
今回の記事は以上です。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。